2017年2月16日木曜日

CNN報道 米 対シリア地上部隊派遣構想に関する備忘録

米国防総省がシリア領内に対し、対ISIS作戦を目的とした大規模な地上部隊を派遣する構想を提案するのではないか?との報道が流れています。

どうやらCNNのスクープらしく、日本語での報道もCNN日本語版が一番充実している印象です。

米国防総省、シリアへの地上部隊派遣を提案か 当局者が示唆

興味深いことに、この動きを予期していた論考が2017年2月8日の段階で存在していました。

トランプは入国禁止令の裏で「宣戦布告」していた シリア侵攻に向けて突き進むトランプ政権

この論考が出た時点では、「トランプ政権は対シリア大規模地上部隊派遣を行いたいのだな、ただそんな事が実現可能なのか?」といった印象を抱きましたが、CNNの報道を見るに、その構想が一歩あゆみを進めたのだ…といった感想です。

CNNの記事中にある
(引用開始)
 もし実現すれば、米軍がシリアで展開する軍事作戦の様相は一変する。承認されれば数週間以内に地上部隊が派遣される可能性もある。
(引用終了)

もしくは部谷氏の論考にある
(引用開始)
 今後、表層的な動きに心を奪われることなく、1カ月後にISIS打倒計画の原案が完成することを冷静に注視しておくべきだろう。
(引用終了)

の文言にある通り、2017年3月上旬には、米軍の対シリア関与に関して大きな決定が下される可能性が非常に高く、注目しておく事が必要と感じます。

さて、大統領の承認が得られ、トランプ政権が対シリア大規模地上部隊介入を決定した場合、いかなる形で作戦が進められるのでしょうか? 

可能性が高いと考えられるのは、トルコと組むという方法です。

個人的には、トルコの設置した「安全地帯」に相乗りする形で派兵すると考えます。
過去のブログ記事( http://kimk91fw.blogspot.jp/2017/02/blog-post_10.html )で、『個人的にはトルコの設置した「安全地帯」にロシア、そしてトランプ政権や湾岸諸国が相乗りし、アサド政権も黙認する…といった予想をしています。』とぼんやりとした感想を述べた通りです。

また、野口雅昭先生も、本日付のブログで以下のような予想をしていらっしゃいました。

 米地上部隊のシリア派遣??
http://blog.livedoor.jp/abu_mustafa/archives/5176762.html 
(引用開始)
 最近米CIA長官がトルコを訪問し、エルドアンとも会談したと伝えられ、さらにエルドアンがこのところトルコ・自由シリア軍のユーフラティスの盾作戦は、ラッカの陥落までは続けられると何度か発言しており、もしかするとトルコと米国の間で、双方が協力してのラッカ攻略作戦が検討されている可能性も完全に排除はできないような気もします。
(引用終了)

CNN報道の以下の部分
(引用開始)
地上部隊を派遣する目的の1つには、クルド人勢力がトルコの利益を脅かす存在ではないことをトルコに納得させる狙いがあるようだ。一部の部隊をまずクウェートに展開させ、そこからシリアに移動させる可能性もある。
(引用終了)
これもまた、トルコの存在を匂わせます。

トルコ側の言動にも、興味深いものがあります。
まず、2016年10月18日の段階で、以下のような報道が出ていました。
米軍と合同作戦も=ISからラッカ奪還へ-トルコ大統領
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016101800811&g=isk

最近でも、エルドアンは以下のような発言を行っていました。
「シリアにおける作戦の最終目標はアル・バーブではなく、ラッカを含む地域からISISを一掃する事だ」といった具合でしょうか。これは、トルコ単独でできる事ではないでしょう。この発言がなされた2月12日の時点で既に、米国がトルコ側に共同作戦を持ちかけていた可能性もあるかと思います。

以上のように、トルコと組むのではないかと考えられる材料は多々存在するのですが、よりロシアとの協調を緊密にした形での部隊展開を行う可能性もゼロではないように思います。例えば、米軍部隊の揚陸をロシア軍が拠点としているタルトゥース港から行い、そこから部隊を展開する…といったシナリオは、可能性は低いもののゼロとも言い切り難いと考えます。現在行われているトルコ・ロシアによる共同空爆作戦に米軍も加わる可能性もあるかと思われます。

米・トルコ、米露関係と米国内世論を注視しつつ、米対シリア地上部隊派遣に関する何らかの決定が発表されるであろう3月上旬を待つのが望ましいかと考えます。

(追記)
イランもまた、今回の米 対シリア地上部隊派遣構想に関係してくるのであろうと考えます。入国禁止の大統領令や核合意関連、更には米・イスラエル首脳会談等で両者の関係は冷え込んでいます。そんな中、米国が対シリア派兵を行う事は、既にシリアに革命防衛隊等を展開させているイランのプレゼンスを相対的に引き下げる事となり、米国にとっては利益となるかと思われます。仮にロシアと緊密に協調する形での派兵となれば、ロシアにとってイランの利用価値が下がる事となり、イランのシリアにおけるプレゼンスはより低下することになると考えられます。

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